えいち家のむかしばなし


父さんの楽しみ
遺伝はこわい
「いじめ」という遊び
美術への誘い
 
 
 
 
 
 
ボクは えいち家の 三人兄弟のすえっ子。 お姉ちゃんと お兄ちゃんが いる。

ボクが少し大きくなって 学校で「美術」という専門の先生に教えてもらう教科ができた。

この日は 15センチくらいの木のかたまりが全員に渡され、
「これから1ヶ月かけて この木に彫刻をするんだ、自分の顔を よく見て 少しずつ ほるんだ。」
愛想のない 専門の先生が そういった。この先生は変わり者で有名だ。生徒に指令をだすと さっさと準備室に入ってしまう。何をしているか わからない。

でも先に この先生の授業をうけていた お姉ちゃんや お兄ちゃんは知っていた。
「あの先生、準備室で スキヤキ作ってるよ」
「俺の時は ご飯を炊いていた」
「放課後に行くと 他の先生たちと するめをやいて お酒飲んでるよ」
先生はグルメで 学校給食に不満があるらしく 自分で昼食を作っているらしい。
そういえば なんか いいにおいが することもあるなあ。

それは さておき 彫刻だけど やってみると むずかしくて なかなか進まない。
先生も たまに顔をだしては 
「そんなじゃ手を切っちゃうなあ。」
「あ−あ、ほりすぎっちゃたよ。」
と、つぶやいている。いっこうに進まないので業を煮やしたのか、
「じゃ、ウチに持って帰って 来週までに少しすすめてこい。」
と宿題にされた。



事件がクラスのみんなに公表されたのは 翌週の美術の時間だ。
「おい、どうしたんだ。宿題を机のうえにだしなさい。」
美術の先生は ノロノロしている ボクにこういった。
ボクには 宿題をだせない事情があり 時間をかせいでいた。
みんなが 作業に熱中したあたりで 先生に告白しようと思っていたのに 目にとまってしまい けっきょく 全員の前で 宿題を見せることに なってしまった。

我が家は 父さんが大工だ。お姉ちゃんも お兄ちゃんも なんか色々作るのが好きな人たち。今思えば こんな家族のいるまえで 彫刻の宿題を 広げたボクが浅はかだったのだ。

ボクが寝入ってから 我が家では
「俺に掘らせろ!」
「あたしにも やらせてよ!」
と一悶着あって 不器用な母さんを除く 家族全員が共犯でボクの 彫刻をとても立派な胸像に仕上げてしまっていた。そのできばえは 博物館にある彫刻のようで とても素晴らしかった。

美術の先生は 怒らずに こういった。
「なかなかのものだなあ。 姉ちゃんたちに やられたのか。おまえんとこは みんな変わってるからな。」
‥そうか、ウチは変わり者なんだ、って初めて自覚させられたのが、この事件だった。




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