えいち家のむかしばなし


父さんの楽しみ
遺伝はこわい
「いじめ」という遊び
美術への誘い
 
 
 
 
 
 
ボクは えいち家の 三人兄弟のすえっ子。 お姉ちゃんと お兄ちゃんが いる。

ボクが まだ小さい、年少のころの はなし。
父さんは 無口で おとなしくて 仕事もいそがしかったせいか あんまり しゃべったり、出かけたりした 記憶がなかった。

唯一覚えているのが ウメ酒事件だ。

毎年 ウメ酒をつくるのが 父さんの役目だったらしい。 日曜の夕方だったと思うけど 洗ったウメを容器にいれて 楽しげに しかし黙々と 父さんは 透明な液体を注いでいた。

「そうか、ウメに水をいれると ウメ酒ってのができるんだな」
ボクはそう思いながら、その作業をながめていた。同時に 「やってみたいなあ」とも思った。

父さんが 容器の半分くらいまで 液体を注いだ時に
「ちょっと足りねえか」と言って台所の母さんの方に行った。

ボクは 父さんがいない間に完成させて ビックリさせちゃおう!
と思って容器が一杯になるように せっせと水を注いだ。 水あそびは 楽しいよね。

あたらしい 液体を抱えて戻ってきた父さんが絶句した。
「おい! なんで一杯になってんだ」
「ボクがいれといたよ」
「バカヤロウ! なにやってんだ!」
「・・・?」

いつも 静かな父さんが 初めてボクを 怒ったのが この事件だった。
ウメ酒作りが 年に1度の 父さんの楽しみだったらしい。
透明な液体が 水でなく 「ホワイトリカー」というお酒だったことは  しばらくしてから やっとわかった。



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